「働き方改革関連法案」完全実施
いよいよ今日から「働き方改革関連法案」が物流・医療・建設業界にも適用される。「働き方改革関連法案」は、画一的な働き方をやめて労働生産性を向上していくことを目的として作られた法案。ということらしい。
1つの大きなポイントとして「時間外労働の上限規制の導入」がある。労働生産性が低く、長時間残業が常態化している日本のサラリーマン(=社畜)にとっては、労働時間も減り生産性が向上するので、いい法案ということになる。よかった。
物流・医療・建設業界の認識
まあ、新しく作られる法案ってやつは、大抵これまでよりも社会をよりよくする理念に基づいて作られるものだ。実際には「働き方改革関連法案」は、2019年4月より施行されていたんだけど、いきなり「時間外労働の上限規制の導入」の実施が難しい物流・医療・建設業界には5年の猶予が与えられていた。その5年の猶予期間が切れて2024年4月で、いよいよ物流・医療・建設業界にも「働き方改革関連法案」が適用される。
つまり、お上(厚生労働省)が「とってもいい、はたらきかたかいかくのるーるつくったけど、ぶつりゅう、いりょう、けんせつぎょうかいではたらいているみんなが、いきなりはむつかしいっていってるから、ごねんのゆうよをあげるね。そのあいだにちゃんとかいかくしといてね(はあと)」って、前々から言っていた訳だ。
んで、最近になって物流・医療・建設業界の2024年問題とかで騒がれ始めているんだけど・・・
夏休みの宿題か!
って言いたくなる。直前になってこんなに騒がれ始めている時点で、この5年間、物流・医療・建設業界は全然準備してこなかったことがわかる。
今後予想されること
まあ、実際、物流・医療・建設業界が今になって騒ぎ始めている理由もわからんでもない。そもそもこれらの業界は、2019年4月に「働き方改革関連法案」が施行されたことすら認識していない。認識してなかったので準備もクソもない。テレビとかで話題になり始めた時に、なんとなくわかってきたくらいの感じだろう。
最近、医療業界で長時間労働による自殺者がでた際の記者会見で、院長が「時間外業務は勉強時間ダー」って平然と言ってしまうところからして、「働き方改革関連法案」を全然認識できていないことがわかる。お前みたいな昭和脳ブラック経営者は「働き方改革関連法案」で駆逐されろって言いたくなる。
5年の猶予期間があったんだから、その間に準備しとけよって話だが、ほとんど何もせずにここまできてしまったからには仕方がない。大事なのはこれからだ。
ブラック業界の終焉
「働き方改革関連法案」は本来、労働生産性することによって、経営者と労働者双方にとってメリットがある法案だ。だから、労働者、特に長時間労働が慢性的に続いている労働者にとって、2024年4月から働きやすい環境が整うかっていうと、残念ながらそうならないと思っている。
俺の予想はこうだ。
まず、「働き方改革関連法案」のベースとなる労働生産性の向上自体に着手されない。最初の頃は、経営者側が法の抜け道みたいな方法・考え方を探すだろう。先に述べた「時間外業務は勉強時間ダー」なんてエクストリーム解釈をする経営者が現れる。で、お上(厚生労働省)やマスコミから見せしめみたいにつるし上げをくらう経営者が何人かでてから、ようやく経営者側が働き方改革に着手する。
次に、斜め上の働き方改革をする。経営者は働き方改革を労働者に丸投げする。俺が勤めていた建設業界の会社は、いきなり働き方改革実施は混乱するから、1年早く(2023年から)働き方改革を実施しようということになった。ぎりぎりの人員で回している職場にいた俺はすげえ嫌な予感がしたが、その予感は的中することになる。
そこでとった働き方改革の手法は、終礼時に手を挙げて今日の残業時間をみんなの前で発表するというものだった。
「いや、幼稚園児かよ!」って思ったが社畜であった俺はその言葉をぐっと飲み込んだ。
んで、実際に残業時間を言っていくと、「俺君、今より30分残業時間を減らそう」となり、1週間もすると「俺君、更に30分残業時間を減らそう!」となり、更に続けていくと「俺君!後15分(以下略)」と、アキレスと亀のような状態になっていった。
「いや、もう人増やせよ!」って思ったが社畜であった俺はその言葉をぐっと飲み込むと同時に「絶対FIREしてやる!」と決意を強くしたのを覚えている。
結局、働き方改革は生産性の向上ではなく残業代抑制にしか使われなかったが、建設業界の現場なんてこんなもんだ。不人気業界となって30年以上経っている建設業界には、生産性向上なんてできる人材は希少種だ。会社全体が良くなることはない。同じブラック業界として30年以上経っている物流・医療も似たようなもんだろう。
そして最後に、労働者が嫌気が差してブラック業界から離れていく。正に俺。斜め上の働き方改革をしていった結果、「こんなやり方で職場環境がよくなるはずがない。良くなるにしても後何年かかるんだ。もうこんなことをしている時間はない」と思ってブラック業界から労働者が離れていく。
労働者が離れないからブラック企業がのさばるなんて言われていたが、皮肉にも「働き方改革関連法案」で、本来のブラック企業に対する労働者の姿が取り戻される。物流・医療・建設業界に多いブラック企業は今度こそ本当に淘汰される。しかし、物流・医療・建設業界は、それを利用する消費者も多い。労働者も減り、仕事が回らなくなったツケは、結局、消費者にまわってくることになる。
自分が一番大事
労働者がいなくなり、消費者にツケが回ってきた社会は、かなりの混乱が予想される。物流では物が運べなくなり、救急等の医療も十分に対応できなくなる。建設については建物の値段が上がったり、工期が延びるだろう。そうなるまでに5年くらいかかるかな。そして、この消費者にツケが回ってくるまでの5年は労働者にとっては苦難の道のりになる。
労働者が「いや、これもう無理だろ。もう知らね」となるまでの5年間は、ブラック企業は何とか今のリソースで対応しようとする。ブラック業界に勤める労働者もそれに付き合わされることになる。もう手の施しようがない状態、明るい未来が見えない状態の中で何とか頑張ろうとする労働者達・・・本当に哀れでならない。
労働から解放されたFIRE民としては、これからの日本の労働環境がどうなっていってもあまり関係ないが、国民皆保険と年金制度は維持しておいて欲しいと思った。ここまで今後の日本社会と労働者を憂いておきながら、結局、自分が一番大事という結論となる。ブラック業界に勤める労働者の皆さんも、同じ様に自分を一番大事にして欲しい。